永和国土環境株式会社|研究論文

循環再利用で水洗化を実現したバイオトイレ・汚水を出さない特殊技術による自己完結型トイレ・循環型トイレ・アクアメイクシステム

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■技術資料−研究論文

天然濾材としてのカキ殻を用いた接触酸化法による汚水浄化に関する研究
供デ喊綺突用処理装置としての性能および生息脱窒菌の性状について

設楽惣助・北岡祐治・小紫皓史
広島大学総合科学部自然環境研究講座
(1991年10月31日受理)

広島大学総合科学部紀要,第17巻,73−89ページ,1992年2月
要  旨: 単独処理浄化槽でし尿汚水を処理した水を、カキ殻を濾材とする三次処理装置でさらに浄化し、トイレ洗浄水として循環再利用する施設について、有機物の処理状況、硝化能など、さらに関連微生物数の変動を調査した。くわえて、窒素除去にあずかる脱窒菌を単離・同定し、個々の菌株の脱窒活性の特性を調べた。その結果、循環再利用によるCl-などの濃縮は、まだ進んでいないのでその影響は不明だが、BODやSSの処理、硝化は高度に進んでいることがわかった。しかし、窒素はNO3-の形で多量に残存している。脱窒菌は、一施設につき1〜3種生息しており、Alcaligenes か Pseudomonas であった。しかも脱窒活性の異なったものが生息しており、種々な環境に対応できると思われること、炭素源のより適切な利用により現在のシステムの改良でも窒素の除去能が改善されうることを示唆している。
キーワード: 汚水浄化、カキ殻、水洗化、脱窒菌、排水再利用
目 次
はじめに
施設の概要および調査方法
結果
考察
おわりに
謝辞
引用文献
. はじめに

下水道がない地域での水域環境の汚染・富栄養化の大半の原因が家庭からの雑排水であることが確認されてから、その処理の必要性が広く叫ばれ、雑排水とし尿を同時に処理するための小型合併処理浄化槽が普及しつつある。これは、有機物の分解には一定の機能をし、BODの基準値20と言う値に疑問は残るものの、BODの低下には役立っているようである。
ただ、硝化は必ずしも十分ではないことも指摘されている。たとえ硝化が完全に進行したとしても、NO3-の形で河川・湖などの閉鎖性水域に放出され、プランクトンなど生物の増殖を助け、それが底質に蓄積し水質悪化に繋がっていることが瀬戸内海での調査などでも明らかになっている(伊達ら、1989)。従って、家庭排水・産業排水とも窒素の除去が必須であり、このための従来の脱窒槽を設けないで窒素を生物的に除去するための改良・研究が進みつつあるが、法令との関連もあって、実働しているものは、極めて少ないのが現状である。一方昨今、地球環境におけるオゾン層破壊および温暖化の原因物質の一つとして二酸北炭素・フロン化合物とともに亜酸化窒素(N2O)の増加も問題視されている。N2Oは、陸域と水域での微生物による硝化・脱窒により発生し成層圏に達してオゾン層の破壊に関与することがわかっているが、地上における人間活動によりNH4+およびNO3-体窒素の増加にともないN2OもIPCCの報告によると1950年前後より急増していると言い、その影響が懸念されていることも念頭におく必要があろう。
家庭排水の浄化に小型合併処理浄化槽が普及しつつあるとはいえ、1986年の調査(厚生省浄化槽対策室、1990年)では、全国で554万基のうち、その約99%にあたる約547万基は単独処理浄化槽であり、硝酸体の窒素が放出され続けている。これを減少させるためにはC/N比の高い雑排水と併せて処理するのが好ましいが、単独のままでの改善も必要であろう。また、個別の浄化をより高度に進めることは、水資源にとっても望ましいことと思われる。このような観点から、今回は、単独処理水をさらにカキ殻を濾材として用いた三次処理装置で高度に処理し、これを水洗トイレ用水として循環再利用している施設について、その処理能および脱窒菌について詳細に調査したので報告する。

調査施設のフローシート
第1図 調査施設のフローシート
調査施設の主要部の構造
第2図 調査施設の主要部の構造

. 施設の概要および調査方法

供檻院С詰
システム全体の基本的な構成は、図−1、図−2に示す通り、トイレより流入した汚水は、単独処理槽で前処理・二次処理された後、三次処理装置に移流される。ここで、濾材としてカキ殻を約80%充填した第1および第2カキ殻接触はつ気槽で、残留有機物およびNH4+などが酸化処理される。 ついで沈澱濾過槽で残留浮遊物質が除去され、活性炭吸着筒を通して脱色された後、貯留槽に貯留されトイレ洗浄水として再利用される。

供檻押調査方法
今回調査の対象とした施設は、A施設(個人住宅)、B施設(集合住宅)、C施設(個人住宅)の 3ヵ所で、いずれも広島市の郊外に位置する。

1)試料の採取
[人水△个諜ち綽絖カキ殻槽水(第2カキ殻接触酸化槽)っ留槽水ゥキ殻(第lカキ殻 接触酸化槽)を、毎月1回、年間12回行った。

2)水質分析
前記 銑い了醂舛鰡媛瓩靴晋紂下表の項目と方法によって分析した。

第1表 水質分析項目と分析方法
分析項目 分析方法
BOD ウィンクラー法(下水道試験法3−21)
SS GFP法 (JIS K-102)
Cl- 硝酸第二水銀法 (JIS K-102)
NH4+−N インドフェノール法
NO2-−N ジアゾカップリング法
NO3-−N フェノールジスルフォン酸法
T−N 高温分解・ガスクロマト法
(住友化学GCT‐12型T一N計)

3)微生物分析
上記一イ了醂舛髻下記の細菌項目について前回と同じ方法(設楽ら、1990)で行った。大腸菌群、一般細菌、硝化細菌(亜硝酸菌、硝酸菌〉、脱窒菌

4)脱窒菌の単離
調査施設の4月,5月度の計数を行った一般細菌用培地、脱窒菌用培地から単離した。一般細菌用培地からは、異なったコロニーのものを釣菌し、平板培地で純粋系かどうか確認した後、脱窒活性を調べた。脱窒菌用培地からは、試料を1ml 考採取し希釈後、平板培地で形成させたコロニーから釣菌し、純粋性を確認後、脱窒活性を調べた。

5)脱窒菌の分類・同定
単離した脱窒菌について属までの分類・同定を下記の事項より行った。
.哀薀狎色性の観察
位相差顕微鏡による形態および運動性の観察
3銅鐇戸生化学的性状テスト、カタラーゼ:1%過酸化水素水での発泡によって判定した。オキシダーゼ:日水製オキシダーゼ用濾紙を用いた。O‐Fテスト:日水製ヒューレイフソン培地を用いた。蛍光性黄緑色色素:日水製 KingA 培地、 KingB 培地を用いた。その他の性状は日本ロシュ製オキシファームチューブ兇砲茲辰拭F営蠅砲蓮▲灰錺鵝複隠坑沓粥砲よび長谷川(1984)を参考にした。亜硝酸還元酵素の型は阻害実験より判定した。
づ纏匕家鏡による形態・鞭毛の有無・付き方の観察

6)脱窒活性の測定
|γ盒櫃稜殕
脱窒菌の培養は、硝酸塩肉エキス液体培地を用いて下記の方法で行った。新鮮な斜面培地から、液体培地が10ml 入った試験管に1白金耳接種し、これを30℃で菌株No.8、No.9については12時間、菌株No.22では24時間、菌株No.5、No.20については、48時間静置培養し、これを前培養とする。前培養の終わった液体培地から1ml を取り、500ml の液体培地が入った500ml の坂口フラスコに接種し、30℃で、12時間または24時間(菌株によって異なる)静置培養をした。
活性の測定
培養した脱窒菌を遠沈により集菌し、0.9%食塩水で2回洗浄した菌塊を20〜25ml の0.05Mりん酸緩衝液(pH7.0)に懸濁させ、菌懸濁液として用いた。反応液の組成は次の通りである。
(a)亜硝酸還元活性測定用反応液:菌懸濁液5.0ml、0.05M NaNO2 5.0ml,0.5M 水素供与体 5.0ml、0.05M りん酸緩衝液(pH7.0)35ml、
(b)硝酸還元活性測定用反応液:菌懸濁液 5.0ml、0.05M KNO3 5.0ml,0.5M 水素供与体 5.0ml、 りん酸緩衝液 35.0ml。反応容器は、100ml のメスシリンダーにガラスフィルターを取付け、反応液に窒素ガスを通気できるようにしたものを用いた。反応温度は、温度効果の調査で特に述べた場合以外は、すべて30℃で行った。測定の手順は以下の通りである。菌懸濁液とりん酸緩衝液の入った反応容器を30℃の恒温槽に浸して、5分間窒素ガスを流しながら温度平衡させた後、水素供与体 5ml と電子受容体(NaNO2またはKNO3)5ml の混合液を加えて反応を開始ざせ、経時的に反応液を 5ml ずつ採水し、即座にメンプランフィルターで菌体を濾過して反応を停止した。窒素ガスは反応中流し続けた。亜硝酸還元活性測走では、濾過した反応液のNO2-の残存量をGries-Ilosvay試薬による呈色で定量した。540nm の吸光度の測定によった。硝酸還元活性測定は、濾過した反応液の残存NO3-量をジフェニールアミノスルフォン酸による呈色で定量した。 吸光度の測定は 550nm の波長で行った。菌懸濁波のタンパク質量は、Lowry の方法によって定量し た(Lowry et al.1951)。

. 結 果

掘檻院…敢沙楡澆凌綣
1990年4月から1991年3月までの水質の測定・分析の結果を表−2、表−3に示した。 A施設は使用開始直後からの調査であり、B施設は4年経過したものである。C施設は脱窒菌の単離のみを行った。

【第2表】水質分析結果(A施設)

【第3表】水質分析結果(B施設)

1)水温の年間変動
水温は微生物の諸々の活性に影響を与える要因であるが、図3にA施設の場合を示した。槽による差はあるが、7〜8月に最高値を、l〜2月に最低値を示した。この傾向はB施設でも同様である。微生物の活動するばっ気槽とカキ殻槽について見ると、A施設では27.8℃〜11.5℃、B施設では30.6℃〜9.8℃の間で変動してた。貯留槽が他の槽に比べて高いのはポンプの熱によるものと思われる。

水温の年間変動(A施設)

2)pHの年間変動
pHも水温とともに微生物の諸々の活性に影響を与える要因であるが、図4に示すように、A施設、B施設ともにばっ気槽水は、pHの変動が大きいが、カキ殻槽水と貯留槽水は、pH7.0と8.0の間で安定していた。またカキ殻槽水は常にばっ気槽水よりも高いpHを示している。これは、濾材のカキ殻が溶け出した結果であろう。

pHの年間変動(A施設)

3)BODおよび除去率の年間変動
 表−2、表−3および図5に示すように、A施設、B施設ともにばっ気槽水はBOD値の変動が大きいが、カキ殻槽水、貯留槽水では1.0付近の低い値で安定していた。三次処理装置によるBOD除去率も常に90%以上であった。ただ、B施設の貯留槽水の10月以降のBOD値が高いのは、貯留槽に雑排水が混入する事故のためと判明した。

BODおよび除去率の年間変動(A施設)

4)窒素成分の変動
窒素成分ではNH4+をはじめとする無機性のものを測定した。図6−1〜6−2に示すように、カキ殻槽水では、ばつ気槽水に見られるNH4+、NO2-は、ほとんど存在しなかった。これは、カキ殻槽でほぼ完全に硝化作用によってNO3-に酸化された結果であると思われる。また、T−N、NO3-とも概して温暖期には減少し、寒冷期にはより多く残存している。この傾向は、A施設、B施設に共通して見られる。

ばっ気槽水中の窒素成分の年間変動

カキ殻層水中の窒素成分の年間変動

5)その他の水質について
SSは、B施設の貯留槽に雑排水が事故で混入した時期を除いては、A施設、B施設ともに1付近あるいはそれ以下の値を示した。
DOは、通常の浄化槽での値より高く、しかも、カキ殻槽ではばっ気槽よりも常に高く90%前後の飽和度であった。
Cl-は、この施設の場合、循環再利用するのであるから、徐々に増加するはずであるが、事故あるいは清掃のためか一定の増加になっていない。

掘檻押…敢沙楡澆糧生物相
微生物に関しては、一般細菌、亜硝酸菌、硝酸菌、脱窒菌の菌数測定を行った。なお、脱窒菌に関しては、さらに詳しい調査を行ったので掘檻魁↓掘檻瓦能劼戮襦

1)大腸菌群
図−7にA施設の結果を示したが、はつ気槽で102〜103個/ml であったが、カキ殻槽水、貯留槽水、カキ殻表面ではほとんど検出されなかった。B施設でも同様であった。

大腸菌群の年間変動

2)一般細菌
一般細菌は、A施設、B施設ともばっ気槽水で105個/ml 前後、カキ殻槽水では103〜104個/ml で、ばつ気槽水がカキ殻槽水のほぼ10〜100倍高い密度であった。また、カキ殻表面は、概してばっ気槽水よりも高い値を示した。図−8にB施設の結果を示した。

一般細菌数の年間変動(A施設) 一般細菌数の年間変動(B施設)

3)硝化細菌
亜硝酸菌と硝酸菌の菌数は、図−9、図−10にB施設の結果を示した。ばつ気槽水とカキ殻槽水は、菌数が大きく変動したが、カキ殻表面のそれは、より高い値で比較的安走していた。

亜硝酸菌数の年間変動(B施設) 硝酸菌数の年間変動(B施設)

4)脱窒菌
脱窒菌数の変動は、図−11にB施設のものを示したが、はつ気槽水で104〜105個/ml と比較的安定した値であったが、カキ殻槽水は、ばつ気槽水の1/100〜1/10,000程度の範囲で変動した。カキ殻表面の菌数は、ばつ気槽水と同じレベルであった。A施設もほぼ同様であった。

脱窒菌数の年間変動(B施設)

掘檻魁|γ盒櫃涼盈イ畔類・同定
A施設とB施設の一般細菌用培地および脱窒菌用培地から単離した27菌株のうち脱窒活性を示したのは4苗株であった。これにC施設より単離した菌株を加えた計5菌株を得た。
これら5菌株について、形態学的・生化学的性状を調査した結果が表−4である。菌株No.5は、Alcaligenes属であり、No.8、No.9、No.20、No.22は、Pseudomonas属と同定され、しかも、すべて異なる種と考えられる。従って、それぞれPseudomonas sp.1〜Pseudomonas sp.4 とした。

【第4表】分離菌株の性状と分類結果

菌株番号 No.5 No.8 No.9 No.20 No.22
菌株の分類 Alcaligenes
sp.1
Pseudomonas
sp.1
Pseudomonas
sp.2
Pseudomonas
sp.3
Pseudomonas
sp.4
菌株の性状 Form SR R R R R
Gram reaction - - - - -
Motility - + + + +
Flangellation NF P(1) Pw(3) P(1) P(2)
Catalase + + + + +
Oxidase + + + + +
O-F test N N N N O
Denitrification + + + + +
King A - - - - -
King B - - - - -
Urease + + + - -
Anaerobic-Glucose - - - - -
arginine - + - - -
Lysine - + + - -
Lactose - - - + +
Sucrose - + - + +
Indole - - - - -
Xylose - + - + +
Aerobic-Glucose - - - - +
Maltose - - - - -
Mannitol - - - - -
Citrate - + - - +
PA - - - - -
NIR TYPE C H H H H

+ ・・・陽性 R ・・・悍菌 P ・・・極毛 O ・・・糖酸化 - ・・・陰性 SR ・・・短悍菌
Pw ・・・両極毛 N ・・・糖非分解 NF ・・・無べん毛 C ・・・銅タンパク質 H ・・・ヘムタンパク質

掘檻粥|盈ッγ盒櫃涼γ盂萓に対する環境要因の影響
脱窒反応は、NO3-→NO2-→NO→N2O→N2と言うように、窒素酸化物が4種類の酵素によって段階的に還元される反応であるから、脱窒活性を測定するには、この全部の酵素活性を測定することが望ましい。しかし、今回は便宜上、5種類の脱窒菌の硝酸還元酵素活性と亜硝酸還元酵素活性の2段階に対する1)水素供与体による相違、2)pHの影響、3)温度の影響の3点について調べた。
さらに、亜硝酸還元酵素活性については阻害剤の効果も調べた。これは、亜硝酸還元酵素の種類を知るためである。

1)水素供与体の種類と脱窒活性
脱窒活性は、脱窒菌が利用する水素供与体の種墳に左右される。したがって、脱窒活性を比較するには、ある程度以上活性の強い水素供与体を選択する必要がある。ここでは、通常よく利用される3種の有機酸塩(酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム)と有機窒素化合物としてアスパラギン酸ナトリウムを用いた場合の硝酸還元酵素活性と亜硝酸還元酵素活性を測定した。結果を表−5に示す。この結果より、すべての菌株で高い活性を示した乳酸ナトリウムを用いて、環境要因の影響の検討を行った。また、この結果を見ると、硝酸還元活性が亜硝酸還元活性よりも6〜7倍高い菌株もあり、このような場合は、亜硝酸塩がたまって菌にとっては良くないであろう。

【第5表】亜硝酸還元酵素活性、硝酸還元酵素活性に対する水素供与体の種類の影響

菌番号と水素供与体 Nitrate reductase activity
(μmol NO3-reduced/hr/mg protein)
Nitrate reductase activity
(μmol NO2-reduced/hr/mg protein)
No.5
Acetate 6.72 6.45
Lactate 7.36 5.97
Aspartate 3.87 3.90
Formate 3.85 4.78
No.8
Acetate 3.42 2.33
Lactate 5.60 8.62
Aspartate 3.06 3.65
Formate 2.78 0.84
No.9
Acetate 2.98 7.63
Lactate 13.30 11.42
Aspartate 7.60 5.64
Formate 12.58 14.61
No.20
Acetate 7.08 1.01
Lactate 11.31 2.18
Aspartate 6.81 1.60
Formate 5.81 1.37
No.22
Acetate 8.45 1.97
Lactate 11.35 7.99
Aspartate 9.03 4.27
Formate 3.83 2.61

2)pHの影響
硝酸還元酵素活性およぴ亜硝酸還元酵素活性の至適pHは、一部の脱窒菌を除いては、弱アルカリ側にあると言われている。今回は、水質分析結課から槽内で考えられる最も酸性側のpH5.5と最もアルカリ側のpH8.5の場合の硝酸還元酵素活性と亜硝酸還元酵素活性をPH7.0の場合と比較した。
図-12-1、12-2に示したように、どの菌株もpH7.0の場合がpH5.5とpH8.5の時に比べ高い活性を示した。また、pH5.5とpH8.5の時の活性の低下の仕方は、菌株の種類と酵素の種類によって異なることがわかる。即ち、酸性側が強くてアルカり性側が弱い場合と、そめ逆の場合があることがわかる。

3)温度の影響
温度は、脱窒活性に限らず微生物の諸活性に大きな影響を及ぼす環境要因であるが、棺内の水温測定の結果をもとに考えられる温度範囲内で温度の影響を調べた。図−13−1、13−2に示すようにどの菌株もとの酵素も10℃一30℃の範囲では、直線的もしくは指数的に活性が高くなった。

硝酸還元酵素活性に対する温殿影響 亜硝酸還元酵素活性に対する温殿影響

4)亜硝酸還元酵素活性に対する阻害剤の影響
脱窒作用に関与する亜硝酸還元酵素には、銅たんぱく質型(Iwasaki et al.1963)とヘムたんぱく質型(Ymanakaet al.1963)の2種類があり、菌種によって異なることが知られている(岩崎1976)。
前者はジエチールジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)に、後者はヒドロキシルアミンにそれぞれ阻害される。表−6に示すように、阻害度に差はあるが、苗株No.5は銅たんぱく質型であり、菌株No.8,No.9,No.20,No.22はヘムたんぱく質型であると推定される。

第6表 分離脱窒菌の亜硝酸還元酵素活性に対する阻害剤の影響
  No.5 No.8 No.9 No.20 No.22
対照
(阻害剤なし)
0.98 8.62 14.78 3.84 7.99
DDTC
(10-3M)
0.0 10.05 12.28 3.90 6.62
(100.0)* (NI)** (16.92) (NI) (17.15)
NH2OH
(10-3M)
1.27 6.12 5.73 3.11 2.97
(NI) (29.00) (61.20 (19.00) (62.83)
* 表中の( )内の数値は、阻害度を示す。
** NI : no inhibition
*** 活性の単位は、μmol NO2-reduced/hr/mg protein

検ス諭〇

カキ殻を三次処理の濾材として用いた単独処理施設で放流式のものについてはすでに報告した(設楽ら、1990)。今回は、処理水を中水として循環再利用する閉鎖系のシステムでの調査であるが、Cl-などの濃縮による影響にも注目したが、この程度の期間ではほとんど考慮する必要がないと思われた。BOD、SSの除去率は90%以上と高く、硝化はカキ殻槽で完全に行われていた。ただ、窒 素の除去は、当然のことながら、極めて不十分である。今回の主要な目的の一つは、脱窒菌相を生態学的に、生理学的に把握することであったが、3施設から分離した5菌株のうち4菌株がPseudomonasであった。この属の脱窒菌は一般に活性が強いと言われているが、環境要因の変化への対応のしかたは、それぞれ異なり生理学的には、多様性が見られた。すなわち、温度に関していえば、調査した温度範囲内では、全般的に高温ほど活性が高くなっているが、比較的変化の緩やかなものと急激なものとある。また、酵素によっても異なり、亜硝酸還元酵素のほうが安定である。
20℃以下の低温下でのみ高い活性を示す脱窒菌も報告されているが(松山ら、1982)、今回の方法では、そのようなものは見いだせなかった。次に、pHの活性に対する影響は、どの菌株のどの酵素もpH7.0の場合が最も高いが、これは、一般的な傾向である(Delwicheet al.1956)。
しかし、酸性側の変化に強いもの、アルカリ性側の変化に強いもの、今回測定した範囲全般にわたって安定なものなど、やはり多様である。それにもかかわらず、カキ殻で槽のpHが弱アルカリに保たれることは、脱窒菌が働くのには、好適な条件である。脱窒苗が活性を示すための必要条件として、BOD(すなわち水素供与体)の存在と嫌気状態がある。BODに関しては、単独処理槽ではC/N比が低く困難ではあるが、現在のままでは有効に利用しきっていないと思われ、改良の余地があろう。酸素条件に関しては、脱窒酵素系が作動するためには、基本的には嫌気状態が好ましいと思われる。しかし酵素系の生成のための酸素条件は一様ではない。即ち、脱窒酵素系の生成に〇請任ほとんど影響しない場合(Robertson & Kuenen 1984)∋請任あった方が良い場合(Shidara 1984;Aida et al.1986)酸素が少し必要な場合ぬ気なが良い場合ネってはならない場合、など菌株によって多様であろう。従って、酸素に強い菌種を使用することも必要であろう。図14は酸素に対する感受性を示したものであるが、これより推測すると今回単離したものは比較的酸素に強いグループと思われる。

おわりに

カキ殻を濾材として使用した施設は、それが溶けてしまうという濾材としては最大の欠点とされる性質を指摘されながらも、使用され続けている。それは浄化のために働く微生物にとって極めて良好な環境であり水環境の浄化に悪い結果はもたらさないことが知られているからであろう。
今後も適切な管理のもとに使用される事を望みたい。

謝 辞

本研究を進めるにあたり、御助言を頂いた広島大学総合科学部の堀越孝雄教授、開発一郎助教授に感謝いたします。また、電子顕微鏡の操作の御指導を頂いた洲崎敏伸博士に感謝いたします。
水質分析の検討に御協力頂いた広島県環境センターの井沢博文氏に感謝いたします。終始御協力くださった株式会社アクアメイクの社員の方々に心からお礼申しあげます。

引用文献

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